子育て中の親1000人を対象に行った番組アンケートでは、子どもの気になる行動について、多くの親が発達の不安を抱えていると回答しました。
かんしゃくがひどい! 突然、泣きわめく…。空想の話ばかりしている…。困った行動をするのは、もともと備わっている「発達特性」によるものかもしれません。子どもそれぞれのよさと違いを認めながら、のびのびと育ち合う環境づくりについて考えます。

専門家:
星山麻木(明星大学 教育学部 教授/特別支援教育)
今回のテーマについて
―― 子どもの気になる行動は「発達特性」によるものかもしれないという話ですが、そもそも「特性」とはどういうものですか?
特性は「脳のクセ」。程度の差はあっても誰にでもある
回答:星山麻木さん
特性は、一言でいうと「脳のクセ」です。生まれつき脳の神経系には違いがあり、得意なことや苦手なことが、ある程度は備わっている傾向があります。程度の差はあっても、誰にでも「特性」はあると理解しておくと、子育てに役立つかもしれません。
―― いわゆる「発達障害」と「特性」では何が違いますか?
本人が周囲の状況で苦しむ場合は発達障害(神経発達症)と呼ぶことも
回答:星山麻木さん
特性は、周囲の状況によって出方が変わります。本人がそれによって困ったり苦しんだりする場合は、発達障害(神経発達症)と呼ぶ人もいるかもしれません。これは医学的な知見です。一方で、調整がうまくいくなど、本人のいいところを育てていけば、障害とは呼ばれないかもしれません。今は、治療すべき病気というより、神経系の発達の違い、多様性と考えるように変わってきています。
突然起きるかんしゃく、どう対応したらいい?
子どもが慎重すぎて心配…
空想の話はどう受け止めたらいい?
落ち着きがない! 今からできることは?
感覚を養う遊びをふんだんに取り入れ、どんな特性の子も安心して過ごせる環境作りに取り組んでいる東京都八王子市の幼稚園を取材しました。

入口を通ってまず目に入るのは、いくつもの砂場と水場。砂や水の感触を、1年中たのしめるようになっています。

園庭では、思い切り走り回って遊ぶ子どもたちもいれば、クラスで協力してみかんを収穫している子どもたちもいます。
活発な子もおとなしい子も、それぞれ気に入った場所で好きな遊びができるようになっています。
原田小夜子さん(園長)
子どもはひとりひとり違います。願いを言葉で表現する子もいれば、態度や表情で表現する子もいます。大人はくみとりながら、環境を整えていくことが大事だと思います。
教室の中にも、子どもたちのさまざまな特性に合わせた工夫がたくさんあります。

園内のあちこちにある、段ボールや布で仕切られたパーソナルスペースは、まぶしさ・音・大勢が苦手な子がほっとできる場所。子どもの希望に応じて、形がどんどん変わるそうです。
小林千鶴さん(副園長)
その子にとってのパーソナルスペースが、面なのか高さなのか距離なのか、その見極めが大切です。繊細な子は、あまり近づかれると会話できません。でも、本当は会話したい・関わりたい子にとっては、関わりたいという心の内にある友だちとの接点を切らずに壁を作るといった工夫ができるように努力しています。

椅子にも工夫があります。クッションやブロックなど、子どもが自分で心地よいと思えるものを、自由に選べます。立ったままのほうが楽な子は、立っていてもOKです。

体を揺らしていると落ち着く子のために用意されているグッズもたくさん。特性に合わせて、無理なく遊びながらバランスよく感覚を刺激できます。

心地よく過ごせる場所や方法を自由に選べるようにしたことで、子どもの気持ちが安定し、好きなことをとことん追求するようになったそうです。
原田小夜子さん(園長)
子どもたちには、どういう選択をして、どういう工夫をすれば大丈夫という体験をいっぱいしてほしいです。それが最終的に自立していくことにつながると思います。
安心して過ごせる環境があれば、子どもは好きな遊びの中でさまざまな感覚を養い、強みを伸ばしていけるようになるんですね。
さまざまな特性を生かし合って助け合う
星山麻木さん
「ニューロダイバーシティ(神経多様性)」という言葉があります。みんな自分だけの虹の色、さまざまな特性があって、自分のよいところ、強みを生かし合って、苦手なところは得意な誰かに助けてもらう。助け合いも、とてもいいと思います。
りんたろー。さん(MC)
うちの子には少し観察するところがあって不安でしたが、それもすばらしい特性として伸ばしていきたいです。
丸山桂里奈さん(MC)
虹の色のタイプ分けは、近所づきあいなどにも役立ちそうですね。自分のことだけではなく、人にも知ってもらえて、お互いに分かり合えそうです。