子どもの目(3)近視
子どもの「見る力」を育てるには、小さいころ、特に3歳までの時期がとても大切です。小児眼科・専門医の富田香さんに教えてもらいました。
今回は、近視についてです。
講師: 富田香(小児眼科専門医)
近視とは
近視は、ピントが網膜より手前に合ってしまい、遠くのものがぼやけて見える状態です。近づいて見るか、眼鏡をかけると鮮明に見えます。
遺伝と環境の2つの要因があり、親が近視だと近視になりやすく、目の使い方などの環境が関わって進行していくといわれています。
ある程度近視になると、遠くのものが見えないので、運動など、行動や動きに影響がでてきます。強い近視になると、小さい子どもでも眼鏡が必要です。強い近視の子どもが、言語発達が遅れてしまう場合もあるといわれています。眼鏡をかけたとたんによく話すようになった、というケースもあるそうです。
また、強い近視は、大人になってから重い目の病気になる危険性が高まります。
近視は増加傾向にある
小さい子には少なかった近視ですが、最近は、年長・年中くらいから始まってしまう子が出てきています。特に小さいころに始まった近視は強くなりやすいといわれているので、気をつけてあげましょう。
近視は世界的に増加傾向にあり、その大きな理由は、スマホやタブレットなどの普及だといわれています。小さい画面を、近い距離で長時間見続けることが近視になりやすいのです。
テレビやスマホ・タブレットで気をつけたいこと
目を守るためには、子どもに見せる時間は短いほうがよいのですが、全く使わないのは難しいことです。
国内外の研究や論文によると、20~30cm以上画面から離れて見ること、長時間見続けないことが大切です。20~30分見たら遠くを見るなど、目を休めましょう。スマホよりもタブレットやテレビのほうが、画面が大きいので、より離れて見ることができます。
テレビからの距離は、視力1.0の場合は画面の縦の長さの3倍程度、視力0.5の場合は1.5倍程度、離れて見るようにします。大人より視力が低い子どもは、近づかないと見えづらいこともあるので、あまり神経質にならず、長時間、至近距離で見ないように気をつけながら見せましょう。
スマホやゲーム機など、小さい画面を近くで見続けると、近視以外にも、立体視、ピント合わせなど、両目で見る機能の育ちにも影響します。目が寄ったままになってしまう「内斜視」、片目を使わなくなる「外斜視」になることがあります。
近視の予防のために
近視の予防のために、まずは「姿勢」が大切です。机に向かうときに、くっついて読んだり書いたりすることがくせになると、なかなかなおりません。2~3歳になったら、テーブルと椅子を使い、見るものとの距離をあける姿勢を習慣にしましょう。
また、太陽光が、近視進行を遅らせるためにもっとも有効ではないかといわれています。運動しなくても、散歩など、屋外にいるだけでもよいのです。台湾では、小学生に1日2時間以上屋外で生活させるという法律ができて10年ほどで、近視が明らかに減っているそうです。
近視は、一度なってしまうと基本的によくなりません。家族で生活の見直しをしてみましょう。
まいにちスクスク「子どもの目」の番組記事
- (1)目の発達
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- (4)目のトラブルとケア
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