【専門家に聞いてみよう】子どもにつけてほしい力って?(1)

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2019/04/07

子どもにつけてほしい力って? ~「非認知的能力」と「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」~

「子どもに幸せな人生を歩んでほしい」「先行き不透明な時代に、子どもには生き抜ける力をつけてほしい」・・・では、そのためには、子どもはどんな力を身につけたらいいのでしょうか?

最近、しばしば耳にする「非認知的能力」や「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」について、“詳しくはわからないが、なんとなく身につけておくとよさそうな力”だと感じているパパ・ママもいらっしゃるのではないでしょうか。

そこですくコムでは、「非認知的能力」「10の姿」についてのいろいろな疑問を、幼児教育の専門家、大豆生田啓友さんにうかがいました。そこには、“幸せな人生” “生きる力”のヒントがありましたよ!

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Q
「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」というのを耳にしました。これを聞くと、「子どもは幼児期が終わるまでにこのくらい育っていないといけない」と、焦ってしまいます。

「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」とは

「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」は、平成30年4月にスタートしたものですが、どんなものがあるかというと、「健康な心と体」「自立心」「協同性」「道徳性・規範意識の芽生え」「社会生活との関わり」「思考力の芽生え」「自然との関わり・生命尊重」「数量・図形、文字等への関心・感覚」「言葉による伝え合い」「豊かな感性と表現」です。

確かに、これを聞くと、パパ・ママとしては「うちの子も、この条件を全部満たさないといけないのかな」という気になってしまいますよね。でも、そうではないんです。

「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」は、幼稚園や保育園、認定こども園の目標なんですね。これまでの研究で子どもの発達について様々なことがわかってきたわけですが、こうした研究成果なども生かして、“幼児期の終わりまでに子どもたちにこんな姿があるといいね”“園では、こんな姿を意識して子どもたちと関わっていこう”と示したものです。つまり、園の目標なのです。

もっと言うと、「10の姿」というのは、厳密には“目標”ではなく、「方向性」みたいなものなんです。「方向性」というと漠然としてるんですけど、「幼児期の終わりまでに、こういう子どもの姿があるといいな」という方向性を示しているだけで、決してこれがどこまでできるか、というものを測る基準ではないんです。

家庭では「10の姿」を意識しなくてもいい

「10の姿」をご家庭ではどう取り入れたらいいか?というご質問を受けることもありますが、家庭では「10の姿」を意識しなくてもいいと思います。無理やり「10の姿」を育てようとするよりも、子ども自身が楽しいと思うようなことや、その子の個性が生かされることを大事にすることが、結果的にこの「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」を育てていくことにもなるので、家庭では、こどもがやりたい遊びや、こどもが夢中になって遊べる環境を親や周りの大人たちがちゃんと保障できているかな、ということなどを意識していただいたほうがいいのではないかと思います。

こういう「10の姿」みたいなものが示されると、この条件をクリアしないといけないんじゃないか、と思いがちなんですが、それはこの「10の姿」の“逆の使い方”なんです。子どもっていうのは、その子によって得意分野が偏っているので、親からみると“これって偏りすぎでは?”なんて思うものですが、実は、その子が好きなこと・得意なことを充実できるように大人が配慮してあげていると、好きなこと・得意なことをやり切った経験が、結果的にはその子の自信になって他の分野へのチャレンジにつながったり、その好きなこと・得意なことをやり続ける中で得た経験が、他の分野への応用にも生きてきたりするんですよね。「10の姿」は、全て土台のところでつながりあっていて、ひとつきっかけがあると、他の分野にも広がって、様々な力が伸びていくものなんです。だから、ニガテ克服のために「10の姿」を次々やらせてみる、というのは本来の使い方ではないんですよね。

snm_001_p大豆生田啓友(おおまめうだ・ひろとも)
玉川大学教育学部教授(幼児教育学・子育て支援)
幼稚園教諭の経験をもち、保育所・幼稚園や子育て支援施設をフィールドとして、幼児教育・保育・子育て支援についての実践研究を行っている。3人の子どもの父親でもある。

幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿

それぞれの「育ってほしい姿」のイメージをまとめました。

1)健康な心と体
子どもがやりたいことに向かって心と体を十分に働かせ、自分で健康・安全な生活を作り出すようになる。

2)自立心
主体的に活動する中で、考えたり工夫したりしながら、やり遂げる達成感を味わい、自信をもって行動できるようになる。

3)協同性
友だちと思いや考えを共有し、共通の目的の実現に向けて、工夫したり協力したりしてやり遂げるようになる。

4)道徳性・規範意識の芽生え
してよいこと・悪いことがわかり、相手の立場に立って行動できるようになる。きまりをまもる必要性がわかり、自分の気持ちや友達との関係を調整しながら、きまりをつくったり、守ったりするようになる。

5)社会生活との関わり
家族・地域の人など、人との様々な関わり方に気づき、相手の気持ちを考えて関わったり、自分が役に立つ喜びを感じたりする。様々な環境に関わる中で、情報・公共施設などの利用を通して、社会とのつながりを意識するようになる。

6)思考力の芽生え
物の性質やしくみなどを感じ取るなど、身近な事象との多様な関わりを楽しむようになる。また、自分と異なる考えに気づき、自ら判断・再考したりするなど、自分の考えをよりよいものにしていこうとするようになる。

7)自然との関わり・生命尊重
自然に感動する体験を通して、好奇心や探究心をもって考え表現するようになる。また、生命の不思議さや尊さに気づき、身近な動植物に対して大切にする気持ちをもって関わるようになる。

8)数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚
遊びや生活の中で、数量や図形、標識や文字に親しむ中でその役割に気づき、興味・関心・感覚をもつようになる。

9)言葉による伝え合い
先生や友達を心を通わせる中で絵本や物語などに親しみながら、豊かな言葉や表現を身につけ、言葉による伝え合いを楽しむようになる。

10)豊かな感性と表現
心を動かす出来事などに触れ感性を働かせる中で、様々な素材の特徴や表現の仕方などに気づき、感じたことや考えたことを表現する喜びを味わい、意欲をもつようになる。

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