ことばの発達がゆっくりで心配… どう考えたらいい?

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2024/05/11

出典:すくすく子育て[放送日]2024/05/11[再放送]2024/05/16

長男(2歳)のことばの発達がゆっくりで、なかなか単語や喃語(なんご)から先に進まず心配です。親が言うことはわかっているようで、ことばは理解していると思います。ただ、「ママ来たよ」のような2語文はしゃべらず、身振りなどでコミュニケーションしています。
実は、1歳6か月健診でことばの遅れを指摘されて、言語訓練を受けてみましたが、大きな変化はありませんでした。子どもにどう接すれば、ことばが出てくるのでしょうか。
(お子さん2歳・9か月の双子のママ)

2語文への階段をのぼっている最中だと思う

回答:田中春野さん

映像を見ると、ママはお子さんに対してよく声かけをしていて、お子さんも反応していて、とてもたのしそうでしたね。とてもいい関係性だと思います。
私たち言語聴覚士は、ことばが出るのがゆっくりな場合、次の点を見ます。



「耳の聞こえ(聴覚障害がないか)、理解の程度(知的な発達はどうか)、人に向き合う力(コミュニケーションはどうか)などです。どれかが難しい場合、それをどうサポートするかを考えます。



ことばは、心身の成長や人と何かを分かち合うたのしさを土台に発達します。「あむあむ」などの喃語(なんご)をへて「ママ」「パパ」などの1語文が出るようになり、単語が50から100語ぐらいに増えると「わんわん・いた」などの2語文につながります。
お子さんは、物の名前や動きのことばなどが増えていく段階で、今は2語文への階段をのぼっている最中だと思います。

音声のことばだけでなく、身体のことば、視覚のことばもある

回答:久保山茂樹さん

お子さんは体を使ってたくさん表現していましたね。コミュニケーションをするときに、「音声のことば」だけではなく、手や体で表現する「身体のことば」、マークや絵で伝える「視覚のことば」も使います。外出のマークを目で見て「これから外に行くんだな」「着替えをするんだな」とわかることがあります。

2つのことをつなげて処理できていて、2語文を話す準備ができている

回答:久保山茂樹さん

お子さんは、2語文までもう少しのところに来ていると思いました。映像を見ると、おままごとで卵を割ってフライパンに入れるといった、2つのことをつなげて処理することが行動のレベルでできているからです。準備はできているので、そこに声がどう乗ってくるのかたのしみに待ちたいですね。

共感的・応答的に対応できている

回答:久保山茂樹さん

ママもパパもお子さんへの関わりがとても上手で、さきほどの「ピッチャー」の話のように、お子さんからの投げかけに対して返していましたね。これを「共感的」「応答的」といいます。

「共感的・応答的」な関わりとは?

ことばを育むカギとなるのは「共感的・応答的」な関わりだといいます。どんな関わりなのか、田中春野さんにお子さん(1歳10か月)と遊んでいる様子を見せてもらいました。


ちょうど「かくれんぼ」で遊んでいるところです。子どもはカーテンに隠れていました。

すると、窓の外を見ていた子どもが「あめ!」と言いました。すると田中さんは「雨!」と応じます。続けて「雨、降ってる?」と聞くと、子どもが「ふってえる」とこたえました。

子どもが「あめちゅよ」と言うと、「そうだね、雨降ってるね」と応じます。

子どもが話し始めたことばを受けて、まねして返すわけです。子どもに「この人は応答してくれる」「共感してくれる」と伝わるので、まねすることを大切にしているといいます。
また、子どもが「あめ」と言ったら「降ってるね」のように、「見ているもの」につながる「動きのことば」を加えて返します。

おもちゃで遊んでいるときは、子どもがどんなものに興味があるのか静かに観察します。

子どもがおもちゃを取り出しながら「あかー、きいろー、しろー♪」と歌っていると、田中さんも一緒に歌います。おもちゃと服が同じ色で、「一緒だね、青」と言うと、子どもは別の色のおもちゃを「あおー、あおー」と言いました。
手に取ったおもちゃは「青」ではありませんが、遊んでいるときはしゃべること自体のたのしさを優先したいので、少し間違っても「違う」と否定したり禁止したりしないように接しているといいます。



―― 「応答的」「共感的」なことばと聞いて難しそうに思いましたが、そうではないのですね。

子どもの自発的な行動を見守るのが基本

回答:田中春野さん

そうですね。子どもの自発的な行動を見守るのが基本的な姿勢です。また、子どもが何を考えているのか、何に興味があるのかを観察します。次に、どんな助けがあるといいか、何を言おうとしているのか、どんなサインが出ているかなどを拾って(耳を傾けて)いきます。


―― 難しいことではないけど、一日中ずっとだとストレスがたまるかもしれないですね。

1日の中で短時間でも子どもと応答的に関わる時間を持てるといい

回答:久保山茂樹さん

子どもが言ったこと全てに反応するのは大変です。1日の中で、5分でも10分でもいいので、子どもと応答的に関わる時間を決めてみてください。お風呂のときでも、寝る前でも大丈夫です。親がスマホを持っていると、子どもがスマホに気をとられてしまうので、置いておくほうがいいですね。

子どもの言うことをまねする。まね上手になる

回答:久保山茂樹さん

例えば、子どもが「あー」と言ってきたら、子どものように「あー」と返してみてください。そのまま返すと、結構続きますよ。「んー」と言ってきたら、「ん~」「んっ」とバリエーションをつけてみると、子どものほうがまねするかもしれませんね。少し大人を忘れて、まね上手になってみましょう。

発達障害・知的な遅れなどがある子どもとの関わりも同じ

久保山茂樹さん

障害や遅れがあると言われると「訓練しないといけない」「教え込まないといけない」と考えがちです。すると、子どものペースとは違うペースになってしまいます。子どもの心が動いていないのに、「ねばならない」で関わっても通じあえません。無理にことばを10個覚えるより、今、この子にとって必要なことばを1個覚えるほうが、意味があるように思います。

ことばを育む「子どもの心が動く」って?

2年前、すくすく子育てに「ことばがゆっくりで、ほかの子に比べるとできない部分が多くて不安」と相談していたママから、こんな声が寄せられました。

娘が2歳のころ、ことばがゆっくりで不安でした。でも、久保山さんから「心が動いているとき、たのしいことをしているときはことばを覚えやすい」「教え込むより、子どもがたのしい気持ちになる場面を作る」とアドバイスをもらったんです。
それまでは、「これは〇〇と言うんだよ」など必死にことばを教えようとしていましたが、例えば、持ってきたおもちゃを見て「何色だね」「たのしそうだね」と言うようになり、家族みんなが変わりました。
その後、3歳のころから、爆発するようにことばがあふれ始め、4歳になった今は「ちょっと静かにして」と言いたくなるほどずっとしゃべってくれます。
(お子さん4歳のママ)
久保山茂樹さん

ママの表情が、2年前はとても「頑張っているな」という印象でしたが、今は「たのしんでいるな」と感じますね。

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