体も心も、とにかく手が足りない… どうして子育てしにくいの?

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2023/06/03

出典:すくすく子育て[放送日]2023/06/03[再放送]2023/06/08

夫婦共働きで毎日時間に追われています。パパは仕事の忙しさもあって、平日の家事育児はママ中心になりがちです。朝は5時に起き、寝るまでノンストップな状態です。

帰宅後の夕食作りは、下の子が甘えてきたり泣いたりするので、対応しながらになります。料理が完成するころにはヘトヘト。子どもたちも保育園で頑張って、親との触れ合いを求めていると感じますが、しないといけないことが多くて、ずっと「もう一人私がいたらいいのに」と思っています。
さらに困っているのが、子育てについての悩みを気軽に相談できるところが少ないことです。両親や兄弟、ママ友はいますが、踏み込んだ相談はできません。
時間に追われながら全てのことをしないといけない焦りと、子どもとちゃんと向き合いたいという気持ちで葛藤しています。うまくできない自分にいらだち、子どもにあたってしまうこともあります。物理的にも精神的にも、子育ての手が足りないと感じています。
(お子さん4歳・1歳7か月のママ)

木下ゆーきさん 

子どもに向き合いたいけど、できなくて自暴自棄になってしまう気持ちは、とてもよくわかります。私は「わかってるけど、できない」ではなく、「できてないけど、わかってはいる」と考えるようにしました。心がネガティブにならない気がします。
すくすくファミリー

自分自身を見ているようです。キッチンで食事の準備をしていると、下の子がかまってほしいと言ってきますよね。私の場合、食事の準備のときは、子どもに味見をしてもらうようにしました。つまみ食いのほうに興味がいくんです。

子育てしにくいと感じる、主な4つの理由

番組には、ほかにも「子育てしにくい」という声がたくさん届きました。その理由の主な4つを紹介します。

1. 性別役割分業の意識

家事・子育ては女性がやるべきという考え方が根強く、ママの負担が大きすぎる。実家に頼ることもできず、「全部やれ」と言われても無理。子どもが生まれて、初めて「こんな大変なんだ」と知りました。
(お子さん6歳・3歳のママ)

2. 子育てにお金がかかりすぎる

特に将来の教育費が不安です。児童手当なども所得制限があって、子どもたちの未来が閉ざされている気持ちになります。今のままだと3人目はあきらめるしかありません。
(お子さん3歳・2歳のママ)

3. 仕事が忙しすぎる

パパは仕事が忙しくて、平日起きている子どもの顔をほとんど見られません。ママも子どもが寝た後、持ち帰った仕事のため日常的に寝不足です。イライラして余裕がありません。男性の育休は、制度はあっても「取るな」という圧力が強く、取りたくても取れないパパがいます。
(お子さん7歳・4歳のママ)

4. 子どもに冷たい社会

街なかで子どもが泣くと、舌打ちされることもあります。つらくて、子どもが騒がないよう気をつかって、いつも肩身の狭い思いをしています。「子どもは宝」という言葉を感じたいです。
(お子さん2歳・第2子妊娠中のママ)

日本で子どもを持つと「お金・時間・尊厳」が失われがちなことを改善すべき

天野妙さん

日本では、子どもを持つと稼げるお金の量が減っていきます。今は共働きが多いのですが、片側が時短勤務になると収入が減るわけです。また、子育てにはとても時間がかかり、自分の自由にできる時間が減っていきます。そして、「子ども産んだのは自己責任」と言われたり、時短勤務でだんだん肩身が狭いと感じるようになったり、思い込みの部分があったとしても、尊厳が失われていきます。私は、この3つ「お金・時間・尊厳」が失われていくことがとても心苦しく、改善すべきだと考えています。

日本で子育てが難しいと感じる「親ペナルティー」とは?

日本で子育てが難しいと感じる人が多いのは、「親ペナルティー」が理由の1つだといいます。社会学者の柴田悠さんに話を聞きました。

解説:
柴田悠さん(京都大学大学院 教授/社会学/3児のパパ)

「親ペナルティー」とは、社会学の言葉で、子どもを持つことで幸福感が下がることを指します。日本では、特にママたちにこの傾向が強いという調査結果があります。いったいなぜなのでしょうか。

ワンオペ育児と夫婦関係の悪化

その理由のひとつが夫婦関係の悪化です。家事育児負担が女性に偏って、子どもが生まれるとますます女性に育児負担が加わり、身体的・心理的負担が増えます。これによって夫婦関係が悪化するわけです。
ここで大事なのは、子どもの存在自体は幸福感を低下させていないということです。問題は負担が女性に偏ることの多い、いわゆる「ワンオペ育児」です。これがママ達の幸福感を低下させる大きな要因になっています。

そもそもワンオペ育児は、人類の歴史を振り返っても、ありえない事態です。「昔は母親が1人で育てていた」と言う人がいるかもしれませんが、それは違います。昔は地域や親族全体で、「共同養育」で子どもを育ててきたのです。ヒトは大脳を発達させる必要があるため、成長に時間がかかり、手のかかる子ども期が長くなります。ほかの動物とは違い、母親1人では育てられず、みんなで子育てするのがヒトの育つ状況でした。「ワンオペ育児」はそもそも無理な子育てのスタイルだといえます。

消費生活の満足感の低下

もうひとつ重要なのが消費生活の満足感の低下です。子どもが生まれるとお金がかかります。そして、将来の教育費などのためにお金を制限します。時間もないので、そもそも買い物に行けない、ネットショッピングをする時間も、検索する時間もない。トイレにさえ行けないような状況もあります。
親が追い込まれると、虐待のリスクが高まったり、子どもの社会性の発達に悪影響を与える可能性もあり、子どもにとってもマイナスしかありません。

「親ペナルティー」のない国の取り組み

子育てしやすい国になるためには、「親ペナルティー」のない国の取り組みが参考になります。例えば、フランスや北欧諸国で拡充が進んでいる「私生活と仕事の両立支援(フレックスタイム制・有給休暇・育児休業など)」です。柔軟に働きやすい国では、親であってもなくても幸福感に差がありません。子育て中かどうかに関わらず、誰もが柔軟に働き、生活しやすい国では、社会全体の人びとの幸福感が高くなります。

日本で子育てしている人の幸福感が低いということは、子育てという私生活が守られていない現状をあらわしています。子育ては未来の社会を紡ぐことです。次の社会の担い手を育てるのは、社会全体の責務で、みんなで子どもを育てていく意識が必要です。


古坂大魔王さん(MC)

とても重要なことだと思います。子どもが生まれて親は幸せなはずなのに、幸福感が下がってしまうことが苦しいですよね。
鈴木あきえさん(MC)

「親ペナルティー」という言葉をはじめて聞いたとき、親としてショックでした。私は、妊娠がわかったときや、子どもに会えたときに、これまでにない幸福を感じたんです。でも、この言葉があるんです。日常生活で余裕がなくなってイライラしてしまうのは、親としての幸せと現状とのギャップを自分で認めることができないからなのかもしれません。

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