ストレスから自分を助ける「コーピング」という方法について、伊藤絵美さん(臨床心理士)に教えていただきました。
コーピングとは「ストレスに対処してみる」という意味をもつ心理学の言葉です。次の3つのステップで行います。
- 自分のストレスに気づく
- 自分を認める
- 自分が心地よいと思う行動をリストアップして実践する
順を追ってみていきましょう。
ステップ1 ストレスに気づく
まず、何が自分のストレスになっているのかを考えてみましょう。でも、何につらさを感じているのかを気づくのは難しいものです。例えば「ひとりの時間がない」など、整理しようとせずに、思い浮かんだことを言葉にしてみたり、ノートに書き出してみるといいでしょう。
ステップ2 自分を認めてあげる
次のステップは、ストレスを抱えている自分を責めないこと。自分を否定せず、「私はしんどいのね」と自分の状態を受け入れて、認めてあげてください。
「子育てが大変なのは当たり前、もっと大変な人はいる」と思って、なかなか受け入れることができないかもしれません。そんなときは、心の中にいる子どものままの自分をイメージしてください。「つらい」と泣いている子どもがいるのです。泣いている子どもを言葉で言い聞かせることはできません。自分も同じ状態にあると考えてください。
ステップ3 心地よいと感じる行動をリストアップして実践
自分のつらい気持ちを責めることなく認めることができたら、今度は自分を助ける方法を考えます。自分が心地よいと感じる行動のリスト「コーピングリスト」を作ってみましょう。質より量、お金も時間もかからない手軽にできるものをリストアップするのがコツです。心地よいことを想像してコーピングリストを書き出すこと自体に、ストレスを和らげる効果があります。
また、親としての自分ではなく、個人としての自分のためにコーピングを考えることが大切です。子育て中だからこそ、子どもから離れたほうがいいときもあります。
コーピングリストができたら、ストレスを感じたときに実践してみましょう。いつでもどこでも使えるように、持ち歩くのがおすすめです。
リストを作るとき「こんなに書けるんだ、自分を癒やす行動がこれだけたくさんあるんだ」と思えました。それが書けたことで、何か安心感もありました。たあいないことだと思ってやっていたことが、自分にとって大事なことだったと再認識しました。
小さいことから大きいことまで書いたので、実際にできないこともありました。でも、できなくても書いてみたり、イメージしてみたりするだけでも違うんだと思えました。
ネガティブな考え方が変化し、新しい観点から物事を見られるようになる
コメント:立花良之さん 心の問題は、どんな人にでも起こりえます。どんなに健康な人でも、どんなに精神力の強い人でも。セルフケアのメリットは、ネガティブに考えてしまうとき、違った観点から物事を見られるようになることだと思います。
落ち込んでいる自分に気づきを向け、評価はしない
回答:伊藤絵美さん 自分をダメだと評価しないことが大切です。元気にならないといけないと考えずに、落ち込んでいてもイライラしていても、あるいは何も考えられなくなっても、そんな自分に気づきを向けることです。評価をしてはいけません。
自分を評価しないためには「ふ~ん」がキーワード
回答:伊藤絵美さん 例えば「今、私は落ち込んでいるんだな。ふ~ん」のように自分を見てみましょう。客観的に、少し引いて自分の状態を見て、それを評価せずに「ふ~ん」という感覚にとどめるのです。そのような受け止め方を続けていきましょう。
コーピングリストで切り替える・その行動を習慣化していく
回答:伊藤絵美さん 落ち込んでいるときは、考え方を切り替えることが難しい場合もあります。「ふ~ん」で受け止めきれないときは、コーピングリストを見てください。「どの方法で自分を助けようかな」と、リストを見るだけでも気持ちが切り替わります。自分で切り替えようとするよりは、「『ふ~ん』で受け止めて、リストを見る」を練習のように繰り返して、習慣化できるとよいでしょう。
少し心に余裕があるときに作っておく
回答:伊藤絵美さん 元気があるときのほうが思いつきやすいですね。その意味では、よく睡眠がとれた日や、心のエネルギーのレベルが50を超えた日など、少し心の余裕があるときに作ったほうがよいでしょう。 ちなみに、私のコーピングリストには、「カエルの写真を見る」「ぬいぐるみをだっこする」などがあります。立派なコーピングである必要はなく、自分自身がホッとできるものを思い浮かべてください。
仕事と子育ての両立で追い詰められる
きょうだい育児がはじまって起こるメンタルクライシス
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