発達に凸凹のある子育ての支援・サポート

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2022/03/19

出典:すくすく子育て[放送日]2022/03/19[再放送]2022/03/26

すくすくナイト「もしかして発達障害?」。
続いては、発達凸凹の子育ての支援・サポートについて考えます。

「助けてほしいけれど…」身も心も限界!

ADHDの傾向がある長男(6歳)は、衝動的な行動が多く、2歳のある日、買い物先でほんの一瞬のすきに姿を消してしまいました。必死に探していたら交番から電話があり、300m離れた電話ボックスでひとりで遊んでいたというのです。そのように、2歳前後は外に出れば迷子になる状態でした。児童館に行けば、他の子どもに手が出ることも多く、気が休まることがありません。
さらに、自閉スペクトラム症グレーゾーンの次男(4歳)は、感覚過敏があるためか偏食が激しく、一時期は赤ちゃん用のせんべいくらいしか食べてくれず、離乳食もほとんど食べませんでした。
悪戦苦闘の毎日に疲れ切って。ある日、「もうだめだ」と思って、区役所の相談窓口に駆け込んだことがありますが、診断を受けられたのは半年後です。毎日ギリギリだけど、支援の手もなかなか差し伸べられなくて、困った状況がずっと続くのがとてもつらかったです。
(お子さん6歳・4歳・1歳のママ)
―― 支援まで時間がかかったとのことですが、いかがですか?

支援者と早く出会うことが重要

久保山茂樹さん

支援に関係する人たちはとても努力していると思いますが、残念ながら、まだこのような状況が各地で起きています。話を聞いて思うのは、やはり親がひとりで抱えていることがとても多いこと。これを何とかしなければいけないと思います。
以前、「どのぐらい自分がしんどければ相談していいのかわからない」という方がいました。その方が後に振り返って「寝られないような毎日が続くなら、すぐに相談していい。遠慮しなくていい。当時の自分にそう言ってあげたい」と言っていました。
中には、相談することで「障害」というレッテルを貼られるのではないかと、ためらってしまう方もいるようです。でも、レッテルを貼るのが目的ではありません。支援者と早く出会うためなのです。どうか遠慮しないで、行政に、あるいは支援してくれるところに、声を出していただきたいと思います。

発達が気になるときの相談先はこちら

発達凸凹の子育てへの支援

凸凹のある子どもの子育てで「毎日困っているのに、実際にサポートを得るのが難しい」という声は他にもたくさん寄せられています。

次男は言葉の発達がゆっくりで、2歳を過ぎたころからかんしゃくが激しくなりました。例えば、テレビを見て「ニャンニャンが出た」と言ったので、私が「ニャンニャンだね」と共感したことが、かんしゃくの引き金になったり、何がきっかけになるかわかりません。かんしゃくはすさまじく、長いと1時間続くこともあり、児童相談所に通報されたこともありました。
困り果てて相談しても、面談は数か月待ちで、すぐには支援につながることができませんでした。追い詰められる日々が10か月続き、ようやく発達支援を受けられるようになり、その後、自閉スペクトラム症との診断を受けました。ちゅうぶらりんの期間がつらかったです。
1歳6か月児健診で指摘されてから療育(発達支援)につながるまでの期間をサポートしてくれる機関や人がいてほしい、救ってもらいたいと思います。

必要な時期に適切な支援につながることは、親子にどんな変化をもたらすのでしょうか? ある地域の取り組みを取材しました。

親子で笑顔になれる発達支援の取り組み

2020年8月に開設された「狛江市児童発達支援センター」では、市内在住の0~18歳までの子ども・家族であれば、誰でも相談することができ、必要に応じてふさわしい支援を受けることができます。センター長は、定型発達(発達の凸凹がなだらか)でない子どもだけでなく、不安を抱える家族まで支援する視点が大切だといいます。

例えば、0~2歳児を対象とした「外来集団クラス」では、音楽や動きを楽しみ、心や感受性の発達を促す「音楽ムーブメント」を行い、集団の中でのコミュニケーションを育みます。

専門のトレーニングを受けた指導者が、親子の様子をやさしく見守りながら、自然な遊びの中で、それぞれの親子に合わせたサポートを提供しています。子どものできないところばかり目について苦しんでいる親にとって、子どもと一緒に体験して、笑顔で楽しんでいる姿を見て、よろこびを共有していくことも大事だといいます。

開設当初は、0~2歳児は支援の対象外でしたが、センターがオープンすると、2歳未満の相談がとても多かったそうです。そこで、2021年の4月から2歳未満の子どもと、その親を対象とした支援の場を開くことになりました。

保護者どうしで子どもの様子を話し合い、子どもへの関わり方について理解を深める時間も設けられています。

<利用者の声>
「本当に子どもの成長が見られました。みんなと一緒に何かをするとか、先生の様子を見て動くとか、そういう力がすごくついたと思います」
「何もかも変わったように思えます。センターに来る前は、寝ない子だったのですが、寝るようになって、人に興味を持って、家族以外の人と触れ合って笑顔でいられるようになりました」

ひとりで悩みを抱え込まずに、相談してサポートを受けることで、子どもだけでなく親にもよい変化をもたらしてくれます。


―― 発達支援は自治体によって大きな違いがあり、このケースが一般的ではないのですが、発達支援は今後どんな方向で進んでいくのでしょうか?

健診・療育・保育園や幼稚園・学校がつながりのある支援に

久保山茂樹さん

「つながる」が大事なキーワードです。それぞれの自治体で、さまざまな課題があるかもしれません。でも、健診の母子保健の人は一生懸命で、療育も一生懸命で、そして保育園・子ども園・幼稚園の先生も一生懸命なのです。もちろん、学校もです。それぞれの一生懸命がつながって、一貫した切れ目のない支援を行う。そのような支援ができると、いろいろな情報も集まってきます。情報が集まれば、園に子どもを合わせるのではなく「この子に合った園はどこか?」という視点で見ることができます。そうしたことで、それぞれの町で園生活を送れるようになるのではないかと思っています。

支援のゴールは「凸凹を治す」ではなく「その子なりの社会参加・自立をする」

広瀬宏之さん

支援のゴールは「凸凹を治す」ことではありません。その子なりに社会参加していくこと、自立していくことです。みんなが同じでなくてもいいので、その子に合った社会参加をしていくことが大事だと思っています。

周囲の人々の力を借りて、支え合う子育て

支援やサポートにはどのような形があるのでしょうか。地域の人々の力を借りながら子育てをしてきたという母親の話を聞きました。

発達凸凹の子育て 20年地域の力を頼り支え合う

現在、長男は大学生で20歳になります。ここまで成長するには、長くて険しい道のりがありました。

生まれたころは手がかからない子でしたが、集団生活が始まると、パニック、友達をたたく・かむなど、毎日がトラブル続き。幼稚園年中のとき、広汎性発達障害(自閉スペクトラム症など)と診断を受けました。小学校に入学して3日目には、「昇降口で暴れています!」と電話がかかってきました。休み時間が急に終わったことが受け入れられず、パニックになってしまったようです。

入学後最初の保護者会で、週に1回、コミュニケーションについて特別な指導を受ける「通級指導教室」へ通うことを話しました。すると、隣の人も同じ通級に行くことがわかって、なんだか心強く感じました。「何かやることはある?」と言ってくださる方もいて、話してよかったと思えました。

たびたび学校へ出向く私のために、学校が空き教室を「待合室」として用意してくれました。そこは、子どもが気持ちを鎮める場所となり、集団生活になじめない子どもたちが落ち着いて過ごせる居場所になりました。
さらに翌年、校長先生のはからいで、この「待合室」は地域の人も自由に使える「地域の部屋」にバージョンアップしました。子育てサークルや発達障害の勉強会など、地域と学校が交流し、子どもを共に支える拠点になったんです。

その一方で、何度も学校から呼び出され、ひとりで対応するのは限界だと感じていました。そんなとき、ある大学のゼミが主催するサマーキャンプへ親子で参加しました。
そこで子どもが仲よくなった大学生に、ボランティアとして自分の代わりに子どもを学校で見てほしいと頼みました。私自身も、子どものことをより深く理解しようと決意して、発達支援について本格的に学び始めました。

このように、学生ボランティアや発達支援を学ぶ親の輪が広がり、現在八王子市で行われている、地域のボランティアが学校で子どもたちを支えるしくみ「学校サポーター制度」が生まれたのです。

それでも、子どもはなお学校では友達とぶつかることが多く、4年生のときには、思い詰めて「退学願い」を書くほどでした。そこで、学校以外にも子どもの居場所を作ろうと、家族ぐるみで行動しました。お囃子会・交通少年団など、さまざまな活動に参加し、子どもを支えてくれる地域の人々とのネットワークを築いていきました。

その活動の中でできたのが、小学校にある「地域の畑」です。お囃子会の師匠、幼稚園・小学校でのママ友・パパ友、学校の先生も一緒になって、さまざまな野菜を作り、給食に提供しています。大学生になった息子は、コロナ禍で人の関わりが希薄になりいらだっていたようなので、地域の人と一緒に汗を流そうと畑に誘いました。
最初は何をやっていいかわからず、ぼんやり立っていることも多かったようですが、今回、自分で率先している姿を見ることができて、誇らしいと思いました。本人に聞くと「地域の方々が、やりやすい仕事を回してくれて、僕が嫌にならないようにしてくれているのではないかと思う。おかげで楽しくやらせてもらっている」と話していました。

鈴木あきえさん/MC

親になると、「自分がしっかりしないといけない、頑張らないといけない」と、無意識に考えてしまいますが、「まわりの人と一緒に」という姿勢を、これからの長い子育てで見習いたいと思いました。
古坂大魔王さん/MC

声をあげるのはとても難しいと思います。でも、実際にやっている方がいることが参考になり、考えていくことができますね。

「困っている」と声をあげれば動いてくれる人がいる

久保山茂樹さん

やはり、「うちの子どもと私はこういう状況で困っています」のように、まわりに声をあげるのは勇気がいると思うんですね。でも、声をあげれば、必ず動いてくれる人がいることを示してくれています。

「社会の壁」を減らして発達支援を進める

広瀬宏之さん

少し前までは、遅れがある人・障害がある人を集めて訓練するという発想でしたが、これからは社会全体として、発達を支える、最初から全ての人に使いやすいように考えられたデザイン「ユニバーサルデザイン」の発想になっていくでしょう。発達を伸ばしていくためには、考え方の壁、制度の壁といった、いろいろな「社会の壁」をできるだけ低くして、なくしていく。壁を減らすことで発達支援を進めていくのが、これからの流れだと思います。

もしかして発達障害? 「発達の凸凹」ってどんなこと?

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