もしかして発達障害? 「発達の凸凹」ってどんなこと?

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2022/03/19

出典:すくすく子育て[放送日]2022/03/19[再放送]2022/03/26

すくすくナイト「もしかして発達障害?」。
まずは、発達障害、発達の凸凹とはどういうことなのか聞いていきます。

もしかして発達障害?

ことばがゆっくりで心配、どう様子を見たらいいの?
1歳6か月児健診でことばが出ず、指さしもしませんでしたが、保健師から「様子を見ましょう」と言われました。でも、まわりの子と比べるとできていないことが多くて不安になり、自分なりにネットで調べました。すると「発達障害」という言葉があって、そうかもしれないと心配になりました。子どもをせかしたくはないけれど、どうしたらことばの力を伸ばしてあげられるのか考えてしまいます。どこまで様子を見ればいいのか、マイペースで大丈夫なのか、気になります。
(お子さん2歳2か月のママ)
―― ことばがゆっくりで心配というママからの声ですが、いかがでしょうか?

ことば以外の表現に周囲の人がことばをのせる

久保山茂樹さん

「様子を見ましょう」と言われて、びっくりしてしまったと思います。ことばの発達は、非常に個人差が大きく、単語の数のような部分だけを見ると不安になってしまいます。でも、ことばとして出ていなくても、いろいろな表現をしていると思います。体の表現や、何かを見せに持ってくるなどです。必ずいろんな形でコミュニケーションしているので、そこに私たちがことばをのせていくことが大事だと思います。
例えば、大好きな遊びをしているときなど、心が動いているとき・とても楽しいことをしているときは、ことばを覚えやすいものです。無理に教えるより、その子が喜ぶこと、やってみたいことなど、「こんなにおもしろいことがあったよ」という気持ちになるような場面をつくりたいといつも考えています。

ほかにも、「名前を呼んでも反応しない。目がほとんど合わない」「かんしゃくがひどい。何が嫌なのかわからない」「ほかの子と遊ばず、いつもひとりで遊んでいる」など、わが子の発達が気になるという声がたくさん寄せられています。

そもそも「発達障害」はどういうことなのでしょうか。

「発達の凸凹」ってどんなこと?

子どもの発達には大きな個人差がありますが、その偏りが大きい場合に「発達に凸凹(でこぼこ)がある」と表現されます。

幼児期に見られる主な発達の凸凹のひとつが、気が散りやすい、じっと座っていられないなどの、ADHD「注意欠陥・多動症」です。

ことばやコミュニケーションが苦手、こだわりが強いなど、社会性の発達に偏りがある、ASD「自閉スペクトラム症」。

体の使い方が不器用、ぎこちないなどの、DCD「発達性協調運動障害」。

また「感覚過敏」や「鈍麻(どんま)」といった、光・音・接触などに過敏、または鈍感な場合もあります。


※写真提供:東京大学 長井志江研究室

例えば、この画像は「視覚過敏」のある人の見え方を再現したものです。環境からの刺激によっては、とてもまぶしく感じたり、ぼやけて見えたり、コントラストが強すぎたり、色がなくなって見えたりすることもあります。しかし、こうした困難さは、まわりに理解されにくいといいます。

発達の凸凹は、生まれつきの脳機能の偏りなどが原因ですが、そのことによって周囲の環境とミスマッチが起きる状態を「発達障害」ととらえようという考えが広がってきています。


―― 発達に凸凹があるとは、どんな状態ですか?

「発達の凸凹」は、いろんな力の差が大きいこと

広瀬宏之さん

人間にはいろいろな力があります。例えば、学習力、会話力、集中力、社会力、運動能力などです。大人になってからは、推測する力、相手の立場になる力、相手に配慮する力などもあります。


※参考:NPO法人 ぷるすあるは

発達に凸凹があるとは、それぞれの能力の差が大きい状態をいいます。例えば、学習がすごく得意だけど、会話がとても苦手などです。人間は、誰でも平均的で均質なわけではありませんが、凸凹が大きいことが第一の前提になります。また、凸凹の状態は人によって違いがあります。
―― 凸凹が大きいと「発達障害」になるのですか?

発達障害や支援は、発達の凸凹と不適応を合わせて考える

広瀬宏之さん

「凸凹が大きい=発達障害」ではありません。とても大事なポイントです。凸凹があっても、その人なりに生活ができていれば、それは個性と考えてもいいわけです。でも、例えば「じっとしていることができない」場合は、集団生活で困ることもあります。



発達障害の診断には、生活していくうえで困っているような「不適応」の状態であることが必要になります。また、「グレーゾーン」といって、発達障害だとはっきり診断されなくても、困っていれば、支援が必要な状態だと考えられます。
―― 「困っている」は、本人が感じるものですか?

本人も困っているが周りの人たちも困っている

広瀬宏之さん

本人も困っていると思いますが、大抵は周りの人が困っています。例えば、じっとしていられない子は、本人は楽しく動き回っているけれど、周りは困ってしまいます。特に日本では、集団の中でひとりだけ違う行動をすると、先生や保護者が困ることが多いのです。
―― 発達障害のある人はどれくらいいるのですか?

どこからを発達障害とするかは、文化・時代・人によって違う

広瀬宏之さん

まず、どこからを「発達障害」とするかは、文化によっても、時代によっても、人によっても違います。今は、10人に1人ぐらいが発達障害ではないかといわれています。1クラス40人であれば、およそ3~4人の割合です。

「困っているかどうか」が支援・サポートの原点

広瀬宏之さん

発達障害の診断・判断では、その子の特性(凸凹)と環境とのミスマッチがとても大事になります。ミスマッチで本人が困っているのです。その「困っているかどうか」が支援・サポートの原点になります。本当は困っているのに、「個性だからいいよね」で済ませてしまうと支援につながらないので、私たちは「個性」という言葉をあまり使いたくないと思っています。
―― あるママから、「かんしゃくがひどいのは子育てのせい?」という声も届いています。
息子はことばが遅くひどいかんしゃく・偏食・寝ない・こだわりが強い・多動などがあって育てるのが大変です。でも周囲からは、わがままとか、甘やかして育てていると思われています。夫や義理の両親からは「育て方が悪い」と責められます。孤独でつらいです。
(お子さん2歳のママ)

子育てのせいではない。「育てにくさ」への理解が大切

久保山茂樹さん

こういった話は本当に多いんですよね。つらいだろうなと思います。これまで、いろいろなお母さん・お父さんと話をする中でよく出てくるのは、「育児のストライクゾーンの狭さ」です。例えば、「ぐずりをおさめるには、この角度でだっこしないといけない」のように、感覚過敏などで、だっこできる範囲がとても狭いわけです。あるいは、新しい味になじめず離乳食が進まない、音に敏感で、すぐ起きて寝なくなるといった状況が、ずっと続いている。
これは、どう考えても子育てのせいではありません。その子の特性、感じ方があるのです。しかしそれは、理解したり、対応することがとても難しいのです。まずは、一生懸命にしていることをまわりの人が認めて、「育てにくさ」への理解を持つことが大切です。このケースでは、どんな状況で育児をしているのか、それを義理の両親に伝える役目をパパに頑張ってほしいと思います。

発達凸凹のある子育て17年のあゆみ

ゲストの平野真理子さんは、卓球指導者で3人のお子さんがいます。長女は東京オリンピック卓球女子団体銀メダリストの平野美宇さん。そして、三女の亜子さんには発達障害があります。亜子さんは、現在(2022年3月)高校2年生で、先日行われた全日本卓球選手権ジュニア女子の部でベスト16まで勝ち上がったといいます。これまで、どのような気持ちで子育てをしてきたのか、教えてもらいました。

もしかして発達障害?
姉2人が赤ちゃんのころとは、何かが違うと感じていました。特別支援学校などで10年ほど教員経験があるのですが、目が合わない・ことばが出ない・音に敏感・体の動かし方がぎこちないといった特徴が、教師時代に出会った子どもたちと似ていると思ったんです。「もしかして、うちの子は発達障害?」という気持ちでした。障害があることは不幸ではないと知っていましたが、この社会では生きにくさがあることも知っていたんです。

やっぱり… でもショック
3歳のとき、けがで受診した整形外科で「障害があるのでは?」と言われました。そのあと、広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)があると診断されました。驚きもありましたが、「やっぱり」という気持ちで、とてもショックでしたね。しばらく、将来の不安を感じたり、「この子がおなかにいたときに、私がいけないことをしたのかも…」と自分を責めたりしました。

社会が娘を受け入れてくれる!
幼稚園に入園するころ、一度「受け入れは難しい」と断られたことがあります。今は「そんなことはない」と思いますが、当時は社会全体から拒絶されたような孤立感がありました。その後、姉2人が通っていた幼稚園に相談すると、副園長先生が「安心してお任せください、この子はきっと成長しますよ」と言ってくださって、恥ずかしながらボロボロと泣いてしまいました。この子を受け入れてくれる社会があるんだと思えて、本当にうれしかったです。

「やりたい」を大切にしたい
三女は運動が苦手で、鉄棒もブランコも上手にできませんでした。幼稚園の参観日で、マットの上をゴロゴロ転がる運動があったのですが、うちの子以外はできるんです。でも、三女だけができずに、マットの上をただ歩いて終わり。それが、6歳のときに自分で「卓球がやりたい」と言ってきました。その「やりたい」という気持ちを大事にしたいと思いました。初めての大会では、全く打てなくて卓球になっていませんでしたが、それでも楽しくてたまらないようでした。

まさか、ここまで!
全日本卓球選手権ジュニア女子の部でベスト16になったときは、「まさか、ここまで!」と思って、本当にびっくりしました。ベンチアドバイザーとして一緒に戦って、もう感動して涙が出て。家族みんなでお祝いしました。
誰よりも一生懸命に、コツコツと努力する子なので、ゆっくりだけど確実に力をつけていって、今があるのかなと思います。

発達の原動力は「できた!」という成功体験

広瀬宏之さん

私は、「できた!」という成功体験が、発達の原動力だと思っています。子ども自身が「やったぜ!できたぜ!」と誇らしく自慢げな顔をしますよね。大人の目からは「そこまではない」ことでも、子どもの「やった!」という気持ちを、親がきちんと拾って伸ばしていく。成功体験を積み重ねることが、今につながったのではないかと思います。

もしかして発達障害? 「発達の凸凹」ってどんなこと?

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