「親をする」のも大変 大きな不安… お金の問題
親をする上での大きな不安要素のひとつは「お金」です。番組のアンケートにも、不安の声が数多く届きました。
中国地方在住、お子さん小学3年生・3歳のパパより 子育てにかかるお金を捻出するのに、自分の必要なものを削って節約しても足りません。フルタイムで働くママと共働きで、協力し合いながらふたりの子どもを育てていますが、あまり貯蓄ができる体制ではありません。就職氷河期世代で、会社員として長年勤めていますが、賃金がほとんど上がらず。地方で基本的に車移動のため、維持費も大変です。食料品などの価格はほとんど都心と変わらず、エンゲル係数(家計の消費支出に占める食費の割合)が高く、圧迫しています。子どもが高校・大学・専門学校に行くとなると、どうなるかわからない状況です。 少しでも収入を増やそうと副業しています。家庭教師や深夜のチラシ配りなど、スキマ時間にできる仕事を見つけようとしています。40代で副業は疲れますが、50代になるとさらに難しくなるので、多少は無理してでも今のうちにと思っています。
日本ではこの30年間賃金がほとんど上がっていない
汐見稔幸さん 日本では、残念ながらこの30年間ほどで賃金がほとんど上がっていません。右肩上がりだった経済成長が止まり、右肩下がりのようになってしまい、いろんなところにしわ寄せがきて、給料が上がらない。一方で、物価は少しずつ上がっています。
シングルのママの声も届いています。
お子さん3人のママより お金がなさ過ぎて、時間も心も全てに余裕がありません。子育ても、何もかもひとりで担っていて、全て私の責任にされる。理不尽すぎて、人生が行き詰まっていて、お先真っ暗です。
ニーズの高い人にはより丁寧な支援が必要
汐見稔幸さん 日本の社会ではシングルの親が少しずつ増えています。シングルの親の特別なニーズがあっても、援助のシステムがまだ十分にはありません。その大変さが、いろんな問題につながってしまうと思います。ぜひこれから、特に困っている人、ニーズの高い人に対して丁寧に支援してほしいと思います。
「親をすることを支える」フランスの保育・教育費 働き方は?
フランスでは子育てにかかるお金や働き方はどうなっているのでしょうか。安發(あわ)明子さんに聞きました。
安發さんは、日本で福祉の仕事に携わった後、フランスの大学院で学び、現在はフランスの子育てや福祉の研究者として、日本との比較などのさまざまな調査を進めています。
大学院生だった安發さんは、子どもが3か月のときから優先的に保育園に預けられたといいます。
子育てにかかるお金
保育料は「払える人が払う」という考え方で、収入に応じて決まる仕組みになっており、世帯収入の1割が原則(上限あり)。ただし、所得税の控除など、負担が軽くなる工夫がされています。
保育スタイルはさまざまで、保育ママが自宅で預かる形もあります。親が就労していなくても、生後2か月半から利用できます。
教育費用も、負担が抑えられるようになっています。3~16歳が義務教育で原則無償です(※給食費は収入に応じて1日数十円~100円程度)。また、大学、専門学校、大学院の授業料も基本的に無償です(※所得に応じて登録手数料が25,000円程度)。
フランス以外に北欧諸国でも学費は基本的に無償です。親の経済的な状況が子どもを直撃しないことを大事にしています。子どもは国の未来を担う。子どもが幸せに育てば幸せな大人が多い社会になるという考え方です。
働き方
働き方についても大きな違いを感じるといいます。
フランスでは法定労働時間が週35時間と決まっています。それを超えると、雇用主は25%、もしくは50%の割増賃金を支払わねばなりません。
男女ともに平均帰宅時間が18時で、どちらも子どものお迎えに行ける、夕食を作れる時間です。一方で、日本は男性の平均帰宅時間が20時で、どちらもフルタイムで働くには難しいことがわかります。
フランスでは、子どもが幸せに育つことが社会全体の利益となるという考え方が強いといいます。手厚い子育て支援の財源のおよそ6割は、民間企業が国に納める社会保障負担金でカバーされています。
安發さんは、「フランスもすべてがうまくいっているわけではないが、社会問題として認めていることが重要」だといいます。
「親をすることを支える」フランスの子育て支援をモデルに?
りんたろー。さん(MC) 大きな違いがありましたね。
フランスには制度が充実するまでの長い歴史がある
汐見稔幸さん 女性が働いて、出産して、育児も始めるときの負担はとても大きく、社会がわかって応援していかなければ、子どもをきちんと産み育てられません。そのことを理屈ではわかっていても、実際には男性中心の政治・社会だったわけです。そのため、フランスでも制度が充実するまでの長い歴史があります。
高等教育は社会の人材を育てるという考え方から、大学などの授業料は無償というのが世界の流れ
汐見稔幸さん 高等教育を受けるのは本人のためだけではなく、社会の人材を育てるためでもあります。勉強して社会のために尽くしてほしい。だからこそ、大学などの授業料は無償というのが世界の流れです。 子どもは親が代表して育てていますが、次の社会を担う大事な宝物。だから、みんなで手厚く子どもを育てていく。私は、日本も少しずつフランスのようになっていくと確信していいと思います。私たちにとって「うらやましい」ではなく、モデルがすでにあることが「ありがたい」と考えたほうがいいと思います。
東京都の子育て支援サービス 「アーリーパートナーシップ」
東京都では、諸外国の制度も参考に「アーリーパートナーシップ」という子育て支援サービスを始めました。25歳以下の全ての初産女性、頼れる人のいない妊婦などを対象にしたサービスで、専門的な研修を受けた保健師などが家庭を訪問し、妊娠期から産後1年までの間、切れ目なくサポートします。「ゆとり」をもって育児できるよう、オーダーメイドでそれぞれの悩みに対応します。
PR