身も心もいっぱいいっぱい 令和の「孤育て」
まずは、「親になるのは難しい」と感じているというママからの声です。
お子さん1歳11か月のママより 共働きで、娘を育てています。毎日やることに追われていて、保育園から帰宅するといつもバタバタ。イヤイヤ期もはじまりました。家事支援などのサービスを使っていますが、それでも回りません。 子どもの成長は何よりうれしく、いとおしい存在です。でも、マンションの一室で、ひとりで子どもと向き合っていると、心の余裕をなくしてしまうときもあります。パパがいるときは協力しながらできますが、平日はいないことが多く、ひとりで何もかもをこなさねばいけません。疲労がたまって体調不良になったこともあります。パパがいないときに、食事や買い物などを助けてくれる人が必要だと感じます。
身も心もいっぱいいっぱいになりながら、ひとりで子育てを背負っている、まさに「孤(こ)育て」をしている人は少なくありません。
すくすくファミリー(お子さん4歳のママ) 家で、ひとりで子どもと向き合っていると、心の余裕がなくなってきます。家事もたくさんあって、どれも放棄できない。帰宅後に子どもが「イヤだ」と言っているのは、我が家を見ているようでした。
すくすくファミリー(お子さん10歳・9歳・7歳のママ) 何度もうなずきました。家事が忙しくなる夕方や朝は、どうしてもひとりでは手に負えないので、特に人の手を借りたいですね。
りんたろー。さん(MC) 親になることが大変と感じている人が多いようですね。
日本は子育ての責任を親だけに転嫁しがち。子育ては社会の責任という発想があまりない
回答:汐見稔幸さん 孤独な環境で孤立して子育てしなければならない人が増え続けています。誰かがいてくれたら、手伝ってくれるし、「いてくれるだけでいい」こともあります。近所の人が「どう?」「元気?」と声をかけて、1日に1回来てくれるだけで、精神的に楽になると思います。「ひとりじゃない」「何かあったら頼れる」という感覚ですね。今では難しいことが多いと思います。 日本は、子育ての責任を親だけに転嫁しがちです。子どもは社会の存在、子育ては社会の責任だという発想があまりないのです。
「親をすることは誰にとっても大変だから」社会全体で子育てするフランスの支援
フランスは、親になることを社会が支える体制を整えてきたといいます。
フランス子ども家庭福祉研究者で、フランスで出産し、日本人の夫とともに子育てをしている安發(あわ)明子さんに話を聞きました。
フランスの子育て支援
専門家の支援は、妊娠中から始まるといいます。妊娠4か月ごろに助産師などが面談し、どんなサポートが必要かを確認します。
安發さんは外国人夫婦で近くに親類などもいないため、「出産後に孤立するリスクがある」と心配され、訪問型のサポートを勧められました。出産までに、心理的・社会的に赤ちゃんが生まれられる環境をつくることが大事という考え方なのです。子どもを産む前から、専門家が産後のことも考えてくれたため、安心感があったといいます。
出産後しばらくは、妊娠中から関わっていた開業助産師が1日おきに自宅訪問。
その後のサポートは保健センターに移り、家事や育児を手伝う「社会家庭専門員」の利用を提案されました(料金は保険料から支払われ、1回あたり0~数百円程度)。1日に数時間でもだっこしてもらって、自分のための時間を過ごすことが大事。赤ちゃんからすれば、ママに全部してもらいたいのではなく、疲れてなくて、自分の好きなこともしているママのほうが好きなんですよと言われたそうです。
本当に困っている人は自分から助けを求めにくい。そこで専門家が動き、妊娠期から全ての人を対象にオーダーメイドでサポートするのです。
支えるのは母親だけではありません。出産後は、夫も子育てに必要なことを入院していた病院で学んだといいます。赤ちゃんが家に来るまでに、ミルクやおむつなど、お世話のしかたを身につけられました。
フランスでは、出産時の父親の休暇日数は最長で28日です。一定の条件を満たす場合、手当が支給されます。「親をするのは誰にとっても大変なこと」という考え方が共有され、「社会全体で子育てする」体制を整えてきたのが、フランスの子育て支援の現在の形です。
専門家と親との関係が密なフランス。専門家はよく「あなたはどんな親になりたい?」と問いかけてくるそうです。自分がどうなりたいか、何を実現したいかを引き出し、表現できる関係性を築くことができ、それを支えられるのが専門職だといいます。支援者には親も子も、自分を大切にできるように寄り添うことが求められているそうです。
丸山桂里奈さん(MC) 子どもが生まれると、寝られないし、自分の生活がほとんど変わってしまいます。初めてのことも多く、わからないことも頻繁に起きます。そんなときに、産前からのサポートや訪問があると、とても安心ですね。
りんたろー。さん(MC) 「どんな親になりたいか」なんて、考える余裕がなかったように感じます。丸山さんなら、どう答えますか?
丸山桂里奈さん(MC) 「骨太」ですね。骨は大事で、骨さえあれば生きていけると思ってます。
りんたろー。さん(MC) 子どもも私も、自分らしくいたいですね。
―― フランスと日本では、子育てのサポートに違いがありそうですね。
フランスでは妊娠期~乳幼児期に、集中的に親子をサポートする体制がある
汐見稔幸さん フランスには、それだけの歴史の蓄積があるのでしょう。昔からこうだったわけではなく、だんだんと現在のように変わってきたのだと思います。 例えば、日本の子育て支援では「母親なら、このぐらいやる」「やれないのは恥ずかしい」といった、「あるべき姿」の押しつけがありました。今のフランスを見ると、「どういう親になりたいのか」など、子どもの主体・親の主体を大事にしてくれます。 特にフランスから学びたいのは、0~2歳ぐらいの乳児期の子どもが手厚く愛されることが当たり前のように共有されていることです。ママがワンオペで苦しまなくても済む、そんな社会システムをつくりあげています。 「孤独感はダメ」「ママはゆとりがなきゃダメ」ということは、よく知られています。聞けば当たり前のことを形にする、孤立・孤独を防ぎ、母親が「ゆとり」を持てるような制度がつくられてきたのです。
すくすくファミリーのみなさんにも、どんな親になりたいか聞いてみました。
〇子どもたちの気持ちに寄り添える親になりたいです。子どもがしたいことがあれば否定せずに、自ずと導けるような親ですね。(お子さん3歳9か月・8か月のママ)
〇子どもがとりあえず笑っていけるような親ですね。よく怒ってしまいますが。(お子さん3歳9か月・8か月のパパ)
〇完璧な親じゃなくてもいい。自立した子に育ってほしいです。(お子さん1歳11か月のママ)
〇「親の背中を見て育つ」という言葉がありますが、私の背中を見てもらう自信がありません。一緒に成長しながら伴走できる親になりたいです。(お子さん10歳・9歳・7歳のママ)
〇自分のやりたいことをやって、子どものやりたいこともサポートする親。自分らしくありたいです。(お子さん4歳のママ)
丸山桂里奈さん(MC) 「親だから」ではない、自分の人生がありますよね。
りんたろー。さん(MC) お互いに、生き生きしていられるといいですね。
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