SNSで育児情報を探す

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2020/09/26

出典:すくすく子育て[放送日]2020/09/26[再放送]2020/10/03

番組では、子育てとSNSについてアンケートを行いました。

その結果、9割近くの人が「子育てでSNSを使っている」と答えています。

利用する目的・理由で多かった答えは「情報収集・情報交換」「悩みや体験の共有」「育児や発達の参考」といった、育児情報を得るため。次に多かったのは「娯楽や息抜き」。主に、育児体験を描いたマンガや絵日記を読んでいるそうです。4コマ育児マンガなど、短時間で読める工夫がされていて、ママたちの気分転換になっています。気になった漫画はパパにもシェア。直接言いにくいママの気持ちをわかってもらう、いいきっかけにもなっているようです。

まずは、SNSでの情報収集について、2人のママに話を聞いていきます。


鈴木あきえさん
今日はよろしくお願いいたします。ふだんはどのようにSNSを使っていますか?

西田さん(1歳3か月 男の子のママ)
Twitterで「#離乳食」や「#育児のヒヤリハット」と検索し、情報を参考にしています。同じ月齢の子どもを育てるパパ・ママとのつながりもあります。例えば、毎月決まった日に、ハッシュタグ「#2019may_baby」(2019年5月生まれという意味)を使って、情報交換をしているんです。いわゆる、ツイオフ(Twitter上のオフ会)です。

中山さん(8か月 女の子のママ)
私はInstagramを使っています。ハーフバースデイのようなお祝いの飾り付けや、育児マンガをよく見ています。同じ年頃の子どもを育てているママたちの情報が、とても頼りになります。

大日向雅美さん
同じ年頃の子どもを持つ親が集ることの、いいところはどんなところかしら?

中山さん
今の子どもの成長を、一緒に共感できる存在がいることですね。ひとりで育児をしていると、娘の成長を見ることができるうれしさの一方で、寂しさを感じたり、育児のしかたが大丈夫か不安になったりします。そんなとき、SNSで同じ月齢の子どもたちの成長の様子を見ると、私と一緒なんだと感じて、仲間意識が芽生えるんです。

鈴木あきえさん
番組のアンケートには「SNSで手の込んだ誕生日会の写真や手作りの洋服を見ると、自分は毎日の育児で精いっぱいで、キラキラがつらく感じた」という意見もありました。いかがですか?

西田さん
コース料理のような離乳食の投稿を見ると、できない自分に落ち込んでしまいそうになるので、あまり見ないようにしています。

中山さん
特にInstagramは、「日常のベストシーンを切り取っているんだ」と思うようにしています。やっぱり、つらいときに目に入ると落ち込んでしまいます。でも、みんな頑張っている上で、キラキラした姿があるんだと思います。

鈴木あきえさん
私もひとりで授乳しているときに、パパと育児をしている投稿を見ると少し落ち込むこともありましたね。
アンケートには「SNSでストレス発散・愚痴をはく」という回答もありましたが、いかがですか?

西田さん
例えば、お昼寝でなかなか寝てくれなかったとき、子どもが悪いわけではないのにちょっとイライラしてしまったり、夫が育児を手伝ってくれるのはうれしいけど、もうちょっとこうしてほしいなと思ったり。本人に言うほどではないけど、何かもやっと残る気持ちをSNSでつぶやいたりしますね。

鈴木あきえさん
ありますよね。つぶやくと多少すっきりしますか?

西田さん
文字にすることで、客観的に自分を見つめ直すことができると思います。こういうことでイラッとしていたんだとか。気持ちもすっきりする気がします。

中山さん
自分でつぶやかなくても、同じような気持ちを発信している投稿を見ると、一緒に気持ちを消化できますね。特に漫画です。「ああ、このもやっとした気持ち、一緒だな。私のもやっとも飛んでいけ」といった感じで読んでいます。

大日向雅美さん
お二人とも、子どもの発達の個人差が大きい時期ですよね。何がスタンダードかわからなくて、焦ったり、不安になったりすることはありませんか?

中山さん
同じ8か月でも、同じ成長をしている子が見当たりません。それぞれみんな違うと理解せざるをえないので、焦る必要もないんだなと思えます。

西田さん
うちの子は1歳3か月ですが、まだ歩いていないんですね。この月齢でも歩かない子がいることは、頭ではわかっているけど、街中に出ると同じぐらいの子が歩いていて。そんなときにSNSを見ると、同じような不安を感じている人がいることがわかって、ホッとしたり、励まし合ったり、救われています。

大日向雅美さん
SNSの情報のキーワードは「救われる、ホッとする」なのかもしれませんね。


どうしてSNSで育児情報を探すのか

どうしてSNSで育児の情報を集める親が多いのでしょうか。孤立をテーマに人間関係を研究している石田光規さんは、今のママたちが置かれている状況の厳しさを指摘しています。

解説:石田光規さん(早稲田大学 文学学術院 教授/社会学)

子どもが生まれる前後の母親は、本当に人生が一変するぐらいのことを経験されると思います。でも、意外と事前情報を教えてくれるところがなく、自分の親に育児をサポートしてもらう方も減っています。そのため、自分自身で情報を探して、自分にとっての育児の環境を自分で作らなくてはいけないのです。
以前は、例えば公園に行って、同じような立場の人を見つけて、声をかけながら徐々に関係を作っていたと思います。あるいは、役所に電話をしたり、問題に応じて窓口を調べたり、なかなか障壁が高い場合もあった。これがSNSでは、問題を解決するための情報を探すことが、スマホ1台で済んでしまうわけです。そのため、とても使われているのではないかと思います。

SNSで情報を探すときのポイント

情報を集めたいとき、SNSは強力なツールになります。しかし、番組アンケートには「探し出したらきりがなく、情報迷子になってしまう」「情報の取捨選択が難しい」といった戸惑いの声も寄せられています。
インターネットの情報の取り扱いにくわしい小木曽健さんに話を聞きました。

解説:小木曽健さん(情報リテラシー専門家)

みなさん、子どもに関わる情報にはとても気を遣うと思います。でも、多くの人が気を遣う分野は、フェイクニュースが拡散しやすい分野でもあるのです。情報を選ぶときは、その情報が広がることで「誰が得をするのか」「誰が損をするのか」「どんなねらいがあるのか」「科学的な根拠はあるか」に注意することがポイントになります。教育や育児についての情報は、気をつけたほうがよいでしょう。

自分が情報を発信するときにも注意が必要です。例えば、写真にはいろいろな情報が含まれているので、もし人に知られたくないものがあれば、写り込んでいないか確認しましょう。
特にトラブルが起こりがちなのは、家族以外の人が写っている場合です。例えば、子どもの友達におやつをあげるときは、「この子の家は甘いものはよかったかな?」など、気遣いや確認をすると思います。同じように、「この子の家はネットに写真をあげていたかな、ネットの中で名前を書いていたかな?」といった気遣いをすれば、トラブルを避けられると思います。

SNSは子育ての情報を得るための大事なツールだからこそ、細心の注意が必要なんですね。


SNSのつながりに救われたママたち

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