“子どものために” 働くことをためらわなくていい3つの理由【ママが働くを考える】後編

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働くことの今とこれからを、研究者の中原淳さんにお聞きした前回の記事。
ママの能力の可能性に雇用側も期待する一方で、社会的にはまだまだ母親が働くことを「子育てを手抜きすること」と考えたり、ママ自身も「子どものためによくないのではないか」と悩みがちであることがわかりました。

前回の記事はこちら。
 

「育児は仕事の役に立つ」そんな研究があるのを知っていますか?
【ママが働くを考える】前編

 
 
ママが働くことは、よくないことばかり?

今回は、そんなイメージをポジティブに変えるお話です。中原さんのお話をもとに、ママが働くことを前向きに捉えられるポイントをまとめてみました。

【お話を伺った専門家】 中原 淳(なかはら・じゅん)さん
中原 淳(なかはら・じゅん)さんプロフィール写真
東京大学 大学総合教育研究センター准教授。

1975年北海道生まれ。会社勤めの妻とともに2人の男の子(小学生・保育園児)を育てる研究者パパ。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材育成について研究している。
大学院での指導学生の浜屋祐子さんとの共著『育児は仕事の役に立つ』では、育児経験が仕事に与える影響について、浜屋さんが行った研究データに基づいて解説している。

1:子どもの進路や夢を、より安定した所得で支えられる

アンケートでは「家計のために働きたい」と答えた方も多くいました。
まさに現在は、働きたい背景に「働かなくちゃいけない」という事情が見え隠れする時代。子育て世代の男性の平均年収は1995年をピークに減少し、今は伸び悩んでいます。
 
地域差こそありますが、たとえば子ども2人を育てていく場合、中学・高校など10代の教育費がいちばんかかる時期に、男性側だけの収入でそれらを負担していくことは、より多くの家庭で難しくなります。
そんな時、2つの収入があることは大きな支えになりますね。所得が安定することは、子どもの進路や夢をより安心して保証できることにつながります。
 
お子さんが小さいうちは目の前の育児に忙しく、先々の成長過程までなかなか想像できないものです。
時々でも、子どもの成長を想像してみる時間、長い目で育児を見つめる時間をもってみることから始めてみてはいかがでしょうか。

 


2:パパの子育て参加が促され、子どもの育ちにプラスの効果が

夫婦ともに仕事をもつことは、「男性は外で仕事、女性は家を守る」という昔ながらの規範を見直すきっかけにもなります。
前回の記事でも触れたように、母親だけでなく父親や、多くの人が育児に参加したほうが、子どもの発達にはプラスの影響を与えると言われています。(※1) 
 
具体的には、例えば父親が育児に参加することで
① 対人関係の学び(多様性のある対人関係を学べるなど)
② 母親が抱える育児ストレスや不安の軽減
③ 子どもの問題行動・破壊的行動や非行を防止する
といったメリットを得られると研究されてきています。(※2) 

 


3:仕事や家庭。子どもの将来の価値観に影響

いちばん身近な大人であるパパとママの就業観や家庭観は、よくも悪くも子どもに多大な影響を与えます。
「背中を見る」とはよくいったもので、いきいきと働いている姿を見て育つ子は、仕事に対してポジティブなイメージをもつ可能性が高いですし、家事や育児を当たり前にできるパパを見ていれば、その子もそれが当たり前になるでしょう。
 
そんな未来を想像してみると、夫婦が互いを尊重し、家庭内で協力し合う姿を見せていくことは、とても大切なことのように思えます。

 

今回の取材でお話いただいた内容は こちらの書籍で詳しく紹介されています。

育児は仕事の役に立つ 「ワンオペ育児」から「チーム育児」へ (光文社新書)
浜屋 祐子 (著),‎ 中原 淳 (著)


お子さんが小さい今はまだ、専業主婦で頑張りたいという声も多かった、今回の「ママの就労」に関するアンケート。
それでも「いつか働きたい」と考えている90%のママたちが再就職の壁を前にしたとき、「ママが働くこと」を前向きに捉えられるひとつのヒントになればと、今回の記事を企画しました。

少しでも不安を取り払い、いきいきと一歩を踏み出せますように。すくコムでは今後もこのテーマを追い続けていきます!

(2018年1月15日取材)


(※1) Ishii-kuntz,M.(2004) Father’s involvement and school aged children’s sociability : A comparison between Japan and the United states. Japanese Journal of Family Sociology.Vol.16 pp.83-93.

(※2) Parke,R.D.(1996) Fatherhood.Harvard University Press.
Harris K.H.,Furstenberg.F.F.& Marmer. J.K.(1998) Paternal involvement with adolescents in intact families : The influence of fathers over the life course. Demography.Vol.35 pp.210-216

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