この叱り方で伝わってるの?~1日中叱ってる気がするママへのアドバイス~

クリップ
クリップ

4

第1回 この叱り方で伝わってるの?~1日中叱ってる気がするママへのアドバイス~

img_vol1_01赤ちゃんのお世話って、言葉が伝わらない分イライラしてしまうことありますよね。
赤ちゃんの気持ちが分からずに叱ってしまって、後で後悔するなんてことよくありませんか?

一日中叱っている気がすると落ち込みがちなママへ、NHK育児番組「すくすく子育て」の解説から、「育児ストレスの解消法」をご紹介します。

解説をいただいたのは、こちらの4名の方々です。
汐見稔幸さん(白梅学園大学学長・教育学)
岩立京子さん(東京学芸大学教授 幼児教育)
大日向雅美さん(恵泉女学園大学教授・発達心理学)
倉石哲也さん(武庫川女子大学 心理・社会福祉学科教授)

どんな時に叱るべき?

img_vol1_02赤ちゃん期の育児は、何をするにもなかなか言うことを聞いてくれないので、気づくといつも叱ってしまうというママもいるのではないでしょうか。でも、いつも叱ってばかりだと、赤ちゃんには伝っているか不安になったり、叱ってばかりいる自分に対して自己嫌悪になってしまったりすることもあると思います。そもそも赤ちゃんには、叱ったことがどれくらい伝わっているものなのでしょうか?
きっと叱らなくても良いようなケースもあると思うので、そのポイントについて専門家の方に解説していただきましょう。

【「なぜ叱られているのか」がわかるまでは、叱っても効果がない。】
(解説:汐見稔幸さん)
叱っても、子どもが「なぜ叱られているのか」がわからないと、また同じことをくり返してしまい、効果がありません。だから、まだ理解力が発達していない2歳ごろまでは、しつけのために叱ることはほとんど必要ないのです。「叱ることは、なぜ叱られているのかを教えること」という気持ちで、あせらないでじっくり教えていきましょう。しかし、小さいうちでも、本当に危険なことをしたときなどは、しっかり目を見て「ダメ!」と、厳しく言って真剣さを伝えることが大事です。そうすると、子どもは、なぜそれがいけないのかはわからなくても、「いけないことだ」ということはわかります。
【3歳頃までは、本当にいけないことをしたときに一言「ダメ」と言うだけでいいのです。】
(解説:大日向雅美さん)
小さいうちは、絶対に叱らなくてはいけないことは、一つか二つでいいと思います。例えば、誰かを侮辱することや、お年寄りや体の弱い人を痛めつけるようなことなど。それ以外のことは、理解力が発達する3〜5歳まで待ってもいいかもしれません。子どもが食事をぐちゃぐちゃにしたら、ママは「せっかく作ったのに!」とカッとなりますが、もしかしたら、手の感触を楽しんでいるのかもしれません。そんなときは一言「ダメ」と言うだけでいいのです。「どうしてそんなことするの」と説得しようとしても、まだわからない年齢では、理屈でわからせるのは無理かもしれません。

この叱り方で伝わってる?

img_vol1_03何度も同じことで叱っていると、本当に叱ることに意味があるのかな?
もしかすると、これって叱っているのではなく、自分のストレスを赤ちゃんにぶつけているだけなのでは?と考えてしまうママもいらっしゃるかもしれません。
どのような叱り方が、きちんと赤ちゃんに伝わる叱り方なのでしょうか。

1歳になって歯が生えはじめたころから、パパやママにかみつくようになった娘さんの相談のケースで解説していただきます。

『なにがいけないのか、因果関係をわかりやすく伝えて』
(解説:岩立京子さん)
子どもの目をみながら、感情をこめて言い聞かせる叱り方はいいと思います。でも1歳の子には、かんだことと叱られたことが結びついていないかもしれません。かまれたところを指さしながら「痛いからかんじゃダメ」と叱り、因果関係を子どもにもわかるように伝えましょう。一度でわからないとしても、繰り返し伝えることが大切です。
『毎回叱るのではなく、メリハリをつけて』
(解説:倉石哲也さん)
こちらは叱っているつもりでも、子どもは大人の関心を引いたと感じて楽しんでいるような面もあると思います。かんだからといって毎回叱るのではなく、ときにはあっさり受け流し、別の楽しいことに子どもの興味を向けたりすることも必要です。
以下に、年齢に応じた理解の状況と叱り方のポイントをまとめましたので、参考にしてください。
【発達にあった叱り方のポイント】
0歳 : ことばは未熟でも表情や態度は理解できる。
→「痛い痛い!」、「ママ悲しい!」など、感情に訴える表情やしぐさで伝えましょう。

1~2歳 : 叱られると理解するが応用がきかず、すぐ忘れる。
→その時・その場で繰り返し、根気強く伝えましょう。

3歳 : ことばがわかり始めるが、言われていることの本当の意味までは理解できない。
→子どもの世界に入り、子どもでも納得できる言い回しで伝えましょう。

4~5歳 : ルールや理由がわかり始める。
→頭ごなしに叱らず、子どものプライドに配慮しながらきちんと説明しましょう。

1日中叱りっぱなし、どうすればいい?

img_vol1_04赤ちゃんのお世話って、忍耐が必要ですよね。
「出来なくて当然」と頭では分かっていても、食べる時にあちこち汚されると、「せっかく作ったのに!」とか「また洗濯物が増える!」とか余計なことまで考えて、さらにストレスが倍増!なんてこともありますよね。そんな1日中叱っている気がするママに、専門家からアドバイスです。

『「約束」で先手を打ち、叱らない工夫も』
(解説:岩立京子さん)
まずは危険なこと、道徳に反することの2つくらいに叱るポイントを絞ったらどうでしょう。それ以外は状況に応じて少し子どもの自由にさせてもいいと思います。また子どもがいけないことをしたあとで叱るだけではなく、「これから外に出るけど走らないのよ」と約束させるなど、先手を打つことで叱る場面を減らす工夫もしてみてください。
『叱る必要がない場面でも子どもに関心を示して』
(解説:倉石哲也さん)
子どもの行動があれもこれも気になって叱りたくなる気持ちはよくわかります。ただ、いつの間にか子どもの悪いところを探してしまうことにもなりがちです。叱るときだけではなく、それ以外の場面でも子どもに対して関心を示したり、ほめたりして楽しい雰囲気を作ってあげることを意識しましょう。

叱るときに注意するポイントを、事例別に紹介します。

最後に、いろいろなケース別に、どのようなポイントに注意すべきなのか、専門家のみなさんからのアドバイスをご紹介します。

●理由を説明して叱るが、何度も繰り返す場合
子どもが魚などの食べ物を投げ捨てたとき、「なぜ、落としたの? お魚さんかわいそう」と理由も説明して叱ったとします。そのときは理解しても、また同じことを何度もくり返す場合ありますよね。このような場合はどのような点に注意すれば良いのでしょうか。

(回答:大日向雅美さん)
小さい子は、自分がしたことに効果があることが、とてもうれしいもの。「これをするとママが反応して何か言う」とわかるとおもしろくなり、ゲーム感覚で何度もくり返すことがあります。そんなときは、冷静に「ダメ」と言うだけにして、投げたものをとりあげるだけにする方が効果があります。
●「ダメ」を連発して、否定し続けてしまう場合
叱っていると、つい「ダメ」って言葉を連発してしまいませんか?
でも、いつも「ダメ」って言い続けていると、言っているママも嫌になってきますし、言われている赤ちゃんにも悪い影響がないか心配になりますよね。こんな場合はどのような点に注意すれば良いのでしょうか。

(回答:汐見稔幸さん)
危険なことをしたときなどに一言「ダメ」と言うのはいいですが、いつも言っていると「お前はダメな人間だ」と言われ続けることになり、自信のない子どもになる可能性があります。 「(あなたは)ダメ」ではなく「(私は)やめて」など、主語が“自分”の言い方をする方が、「ママはやめてほしいと思っている」という気持ちが子どもに伝わりやすく、効果的です。
●妥協せずに、ママが納得するまで叱ってしまう場合
一度叱り始めたら最後まで妥協せずに、叱り続けていることはありませんか?
食事の途中で席を立って遊び始めてしまった場合に、「ちゃんと“ごちそうさま”を言わないと遊ばせないよ」と、何度も叱ってしまうケースでのアドバイスです。

(回答:大日向雅美さん)
「ごちそうさま」と言わせる形にこだわっているようですが、「ごちそうさま」は、食事がおいしかったね、よかったねという気持ちを一緒に分かち合うために言うのです。パパやママも一緒に食べると、子どもは自然と「ごちそうさま」と言う気持ちになります。子育ては勝負ではないので、「絶対に負けてはいけない」と思わずに、やってみてダメなら折れてもいいかな、くらいの気持ちでやればいいのです。
●ママがたたいてしまう場合
危ないことをしたときは、お尻や手をたたき、強く叱ってしまうこともあるかもしれません。これは良くないことなのでしょうか?

(回答:大日向雅美さん)
原則として、怖い顔で「ダメ!」と強く言うだけにしたほうがいいですね。疲れたりイライラしたりしているとたたいてしまうこともありますが、基本的にはよくないことです。「しつけのためにたたいている」と自分を正当化すると、どんどんエスカレートしてしまいます。また、子どもがなぜたたかれたのかわかっていないと、「悪いことをしていないのにたたかれた」と、理不尽な思いをずっと抱い続けることになってしまいます。
●ママが子どもに、怖いシーンをイメージさせるなどで脅してしまう場合
子どもが言うことをなかなか聞いてくれないときに「おばけが来るよ!」などと脅かしてしまうこともあるかもしれませんが、良くないことなのでしょうか?

(回答:汐見稔幸さん)
脅すことは、原則としてはよくありません。子どもは、小さいうちほど本気で怖がってしまい、大人になってからもその恐怖から抜けられないことになります。

今回の特集は、いかがでしたでしょうか。
「叱り方」に関する不安や悩みが少しでも軽減できていれば幸いです。
次回は、「育児のイライラ解消法」について解説しますので、次回もご覧ください。


育児のストレス解消特集

PR

×     閉じる