【専門家に聞いてみよう】子どもにつけてほしい力って?(3)

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2019/04/19

子どもにつけてほしい力って? ~「非認知的能力」と「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」~

「子どもに幸せな人生を歩んでほしい」「先行き不透明な時代に、子どもには生き抜ける力をつけてほしい」・・・では、そのためには、子どもはどんな力を身につけたらいいのでしょうか?

最近、しばしば耳にする「非認知的能力」や「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」について、“詳しくはわからないが、なんとなく身につけておくとよさそうな力”だと感じているパパ・ママもいらっしゃるのではないでしょうか。

そこですくコムでは、「非認知的能力」「10の姿」についてのいろいろな疑問を、幼児教育の専門家、大豆生田啓友さんにうかがいました。そこには、“幸せな人生” “生きる力”のヒントがありましたよ!

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Q
最近よく耳にする「非認知的能力」と「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」は関係があるんですか?

「非認知的能力」「10の姿」は幼児教育のトレンド

平成30年4月に「10の姿」がスタートした背景には、いま、世界でトレンドとなってきている“幼児教育を大事にしよう”という方向性に、日本も足並みを揃えていこうという流れがあります。近年、幼児教育のなかで大事にされている考え方はいくつかあるんですが、その中には「子どもの主体的な学び」など、いわゆる「非認知的能力」といわれるものが多く含まれています。

非認知的能力というのは、これからの社会の変化に対応し、社会の課題を解決していくための基礎となる力です。例えば、「いろいろなことに好奇心をもっている」とか、「うまくいかなくても落ち込んでばかりいないで気持ちを切り替えるのがうまい」とか、“生きていくうえで大切な力”といってもいいでしょう。こうした力を乳幼児期に身につけておくと、人生を幸せに過ごすことができるといわれています。一方、「認知的能力」というのもありまして、これは、文字や数など、身についているかどうかがわかりやすい力です。言ってみれば、IQテストや学力テストなどで測ることができる力のことです。

“非認知的能力は赤ちゃんのときから育っていく”など、非認知的能力については、最近の研究でさまざまなことがわかってきています。こうしたことを受けて、幼児教育の中でもしっかり育てていこうというのが、世界の潮流となってきているんです。

人生の土台「非認知的能力」

「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」には、認知的能力と非認知的能力の両方が入っています。例えば、「数量・図形」なんかは、認知的能力の側面が強いといえますし、「自立心」「協同性」なんかは非認知的能力の側面が強いですよね。認知と非認知の両方が盛り込まれていることにも表れていますが、「10の姿」には認知的能力と非認知的能力、両方の力を支えあうようにどちらも育てていけるといいよね、という考えが背景にあります。この時、重要なのは、「非認知的能力がベース」ということです。つまり、意欲やコミュニケーションみたいなものが大事にされていると、子どもは安心してあそびに夢中になれる。あそびに夢中になってとことん深くあそびを追究していくと、“もっとこうしてみよう”“もっとこんなことを調べてみよう”“こんな風に工夫したら何かできるんじゃないか”というように興味・関心が広がっていきます。つまり、意欲など心情的なもの、非認知的なものを大事にしていると、子どもはそれを土台にして、だんだん認知的能力のほうにチャレンジしていくようになるんです。例えば、「文字・文章を書く」という項目については、それだけみれば認知的能力なんですが、その背景として子どもが「友達の○○ちゃん大好きだから、お手紙を書きたい」という気持ちをもっているかもしれない。その場合には、その子どもには「伝えたい」という意欲がある、つまり非認知的能力が育ってきている状態といえるんです。こんな風に、意欲をベースにすると、子どもは「文字・文章を書く」という認知的なスキルへ自ら発展させていく、ということなんです。

snm_001_p大豆生田啓友(おおまめうだ・ひろとも)
玉川大学教育学部教授(幼児教育学・子育て支援)
幼稚園教諭の経験をもち、保育所・幼稚園や子育て支援施設をフィールドとして、幼児教育・保育・子育て支援についての実践研究を行っている。3人の子どもの父親でもある。

幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿

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